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VOLUME.04 GUEST Kinpro 新矢千里 その2

Kinpro 新矢千里
グローバルに活躍する、北海道在住のイラストレーター・Kinpro新矢千里さんが登場! 何を隠そう、樋口卓治と中学時代の同級生であり、本サイト内企画「ふりがな英語」でのイラストレーションを手掛ける新矢さん。いったいどんな話が飛び出すのか、同級生対談をお楽しみください。
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趣味から仕事へ

樋口 でもさ、昔は趣味でノートの切れっぱしに描いてたことが今度は仕事になっていくわけじゃない? そこはどうやって折り合いを付けてるの?
新矢 いや、もう仕事が来るだけで嬉しかったから。クライアントからの要望に応えていくことが楽しかったんだよね。自分らしいタッチを求めるよりも、仕事として絵を描けることが楽しいというか。
樋口 別の仕事に繋がっていくのだって、新矢の作品を見た人からオファーがくるわけでしょ?
新矢 そうなったのは30歳近くなってからかな。それまでは本当にただラッキーなことに『an』の表紙があったから、自分のテイストに近い形で仕事が来てたけど、でも大概は「ダレダレ風で」とか。それでもそれなりに楽しんでいたけどね。
樋口 自分のフォームがまだ固まんないで、発注する側のボールを打つっていう。
新矢 固めるつもりがなかったのかも(笑)。
樋口 だって最近だもんね。固まってきたの。
新矢 そうそう(笑)。だけどやっぱりね、イラストレーターとして、「あっ! この人の絵だ!」ってちゃんと分かってもらえるようになりたいなっていう思いはあったのよ。ただ器用に描くことはできるから、不安はないままにダラダラときちゃって(笑)。前に卓ちゃんを展示会に呼んだことがあったでしょ? 「どれが好き?」って聞いたら「僕はこれが好き」って言ってくれたけど、あのときはまだ自分のテイストが全然固まっていなくて。
樋口 今ほど、はっきりしたカラーはなかったもんね。
新矢 ちゃんとしたスタイルが決まったのは、2000年。実はまだ、そんなに経ってない(笑)。
樋口 そうだよね。でも、ある時期に突然決まってくる感じはすごく分かるよ。
新矢 キャラクターモノにしてもそうだけど、いろんなタッチを描いてたからね。コンピューターが導入されてからは、雑誌の版下とかもコンピューター寄りになったし。
樋口 版下だと切り貼りでしょ。コンピューターだとどうやって作るの?
新矢 私はマックだったけど、タッチペンツールで色を塗ったりとか。手塗りよりも全然早いし、キレイに仕上げられちゃうもんだから、「あれ!? これでいいじゃん」って(笑)。線とかも一生懸命、きれいに描く練習してたのに、マックだときれいな線が簡単に描けちゃうからね。
樋口 ある意味、職人っぽい仕事が機械に侵されてるわけでしょ?
新矢 まあねえ、そういう悲しさはあるよね。たとえば、文字にしても写植屋さんっていう人たちがいたけど、自分でできるようになっちゃったりするからね。でも……私としては、もうこれは便利だ!って感じかな。絵具も減らないし(笑)。

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新矢千里にとって「仕事」とは?

樋口 新矢に『情熱大陸』とか『仕事の流儀』みたいな番組出演の仕事が来たら、コンセプトはなんて言うの? 新矢にとって仕事とは?みたいな。
新矢 仕事とは? 「仕事」って考えちゃうと「仕事」じゃないかもしれない。
樋口 何かの延長ってこと?
新矢 ……何かの延長でもないけど、もちろん仕事でちゃんと守らなきゃいけないことはあるけど、仕事って考えちゃうと仕事じゃないんだよな〜。好きだから……とか? う〜ん、何て言うんだろう?
樋口 「好き」っていうのがすべての、延長にあるんだろうね。
新矢 うん。そうだね、やっぱり好きだからかな。話が戻っちゃうんだけど、イラストの仕事を選んだ時に、きっと儲からないだろうなって思っていたし、好きじゃないとできないっていうか。
樋口 不安定は不安定だしね。
新矢 特にバブリーな時代だったから。ボーナスってなんだろ? どうやら皆は旅行に行ってるらしいぞ?とかね(笑)。ボーナスどころか、次の仕事も見つかってないような時期もあったから、いいな〜って(笑)。あ、ちょうどそのときにペーター佐藤さんの絵がものすごい好きだったんだよ。本を読んだんだけど、考え方がもうすごく大好き。「好きこそものの上手なれ」って。
樋口 好きだったらいいんだよと。
新矢 そうそう! そんな単純なことでずっとやってきてる。
樋口 なるほどね。その「好き」っていうところから今まで外れずにやってこれてるっていいよね。
新矢 ここまで来れたのは、いろんな人と出会えたこともそうだけど、本当にラッキーだな〜と思って。
樋口 俺たちは、好きなことが大前提で仕事してるけど、すべてが好きなことをやってるか?って聞かれたら、絶対そうじゃないよね。そしたら、その中で楽しいことをやるしかない、と割り切って、やっていく方がいいなって。
新矢 卓ちゃんは、いつそういう風に思ったの?
樋口 テレビっていうのは、チームで作っていくんだっていうのを自覚したときからかな。個人で物を書いたりしていくんだったら、好きなことをやればいいと思うんだけど、ディレクターもいれば、放送作家もいて、カメラマンもいるわけでしょ。その中で楽しいことをやるって割り切ってから、ラクになった。

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樋口卓治の放送作家デビュー

新矢 一番最初に手掛けたテレビの仕事は?
樋口 古舘プロジェクトに入る前の会社で作家にならせてもらったんだけど、そこでは調べ物ばっかりしてた。当時はインターネットもFAXもないから、なんでもかんでも電話しまくって調べてたんだよね。番組だと、『トレンディーナイン』っていうバラエティかな。1クールで終わっちゃうんだけどね(笑)。ちょうどトレンディードラマの全盛期で、裏では浅野温子・主演ドラマをやってて、その横で『3年B組金八先生』をやってたのよ。だから、めちゃくちゃ視聴率悪かったのよ。
新矢 ははは(笑)。
樋口 まあ、俺が手掛けた!とも言えないくらいの感じだけど。それが初めてかなあ。
新矢 そのときは、その割り切るとかっていう部分はまだ……
樋口 そのときはねえ、今考えれば、超イタかったから。
新矢 ちょ、超!?
樋口 超(笑)! あれ? なんで俺の企画が台本に載ってないんだろう?とか平気で言っちゃう感じ。「おまえ、まだ企画考えてないじゃないか」って言われて、「あー、そ〜か〜」って(笑)。あと、古舘さんが喋る台本を発注されてもないのに、勝手に書いて、こっそりコピーして紛れ込ませたりしてた。そんなもん、「なんだこりゃ!?」って話になるじゃん(笑)。
新矢 そんなことしてたんだ(笑)。
樋口 勝手にね。なんとなく俺も発注された気分になりたくて書いてた。そんなことばっかり、ずっとやってたんだよ。あっ、(本番で)飛ばされてる、みたいな。
新矢 そういうとき、古舘さんは何て言うの?
樋口 いや、苦い顔はしてたよ(笑)。「誰がこんなことやってるの?」みたいな。ただ、俺は下っ端なんだっていう感覚があんまりなかったんだよね。だって、「会議ではみんな平等だ」って聞いてたからね。じゃあ、平等なんだろうなって思うじゃん。そしたら全然平等じゃない(笑)。なんで、僕にこの仕事をくれないんですか?って、ずっと思ってたし。
新矢 すごい! それはすごいわ! 素晴らしい。イタイというかイタくて良かったんじゃないの? 多分、それはあんまりできないことだから、それをできちゃう自分がいたっていうことが素晴らしいと思うよ。
樋口 俺たちはもう後輩を叱ったりとか、指導する世代になっちゃってるじゃん? でも当時の自分を思い返すと、後輩にいくら怒ってもなにも響かないと思うよね。「わかってねえなあ、コイツ」って思うくらいのもんで(笑)。
新矢 なんだか分からない自信っていうのは、ある意味強いよね。でも、間違った方向にいってないっていう。
樋口 でもそのくせ、下っ端としてじゃなく、いざ放送作家としての仕事が来ると、「わっ!」ってビックリするの(笑)。新人でもちょっとイタイ新人だったわけじゃん? それが放送作家として、いろんな会議に行くとなると、そこには俺みたいな奴がいっぱいいるのか〜!って。今度は、そこに対等にいこうとするのよね。要は育ちなのよ。
新矢 育ち?
樋口 要はいかに厳しい戦場で戦ってきたかっていう。俺は、自分の考えを人に何と言われようと自由奔放にやってきてたから。軍人でもないのに勝手にヘルメットを被って、鏡の前で俺は「軍人だ」って言っても、いざ戦場に行ってもなにも分からなくて、「あれ? 銃ってどうやって持つんだろう?」ってなるわけよ。
新矢 パーン、パーン、パーン!!って撃ちまくっちゃう感じ(笑)?
樋口 そうそう(笑)。それでも生きて来られたのは、プロフェッショナルな人たちと一緒に面白いことがあるとワーって笑っていられたからかな。
新矢 狙ってたところが外れてなくて、自分なりにいっちゃってたところも実はちゃんとバランスが取れてたんだろうね。
樋口 ねえ。体育の時間にみんなでマットを運ぶじゃん? 俺は力を入れてないけど、一生懸命力を入れてるフリをするんだよね。「いけー! いけー!」とかそういうフリをするのがすごい上手かったんだよね。「じゃあ、あなた持ってないよね?」ってならないんだよね。
新矢 それは確信犯だったんだよね?
樋口 俺はずば抜けて要領が良かったんだと思う。才能じゃなくて要領が良かった。何か書いてくれって言われたら、ドキドキして書けないんだけど。
新矢 「書いてくれ」って言わなかったら、勝手に書くけど(笑)。
樋口 だから、新矢は「好き」っていうところにいるけど、俺は楽しい場所の周りにいることが好きだったのかも知れないよね。
新矢 なるほどね〜。
樋口 だから、新矢の「好き」っていうのとは違う。俺ね、“門前の小僧習わぬ経を読む”っていう言葉が好きなんだけど……
新矢 どういう意味?
樋口 お寺の門前で庭掃きしてる小僧っていうのは、坊さんじゃないんだよ。毎日お経を唱えてるのが聞こえているうちにお経が唱えられるようになるっていう。だから良い環境にいて、素直に「あっ! それいい!」って思っていれば、自然と技術は身に付く、と。だから環境っていうのはすごい大事なんだよね。
新矢 あ〜確かに大事だよね。自分のいる場所とか周りにいる人たちとか。
樋口 誰かと交渉したり、仕事したりしてるのを盗んでやろうと思って見てるわけ。
新矢 なんか卓ちゃんの話を聞いて、私もそういう中にいるのは好きだったのかなって思う。
樋口 うん。俺の近くには古舘さんがいたじゃない? 古舘さんはすごく勉強家だから、その横でボーっとしているだけでも、いろんな企画が耳に入ってきたりするんだよね。違う芸人のアシスタントとかしてたら、また違ってただろうし。それで人一倍要領がいいから、そこに紛れ込むのもうまかったっていう(笑)。サッカーのユニフォーム着てさあ、サッカー選手っぽい動きしろって言われたら、できそうな気がするもん(笑)。全然ニセモノなんだけど。



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